苦しみの日々、哀しみの日々の贈りもの苦しみの日々哀しみの日々 それはひとを少しは深くするだろう わずか五ミリくらいではあろうけれど さなかには心臓も凍結 息をするのさえ難しいほどだが なんとか通り抜けたとき 初めて気づく あれはみずからを養うに足る時間であったと 少しずつ 少しずつ深くなってゆけば やがては解るようになるだろう 人の痛みも 柘榴のような傷口も わかったとてどうなるものでもないけれど (わからないよりはいいだろう) 苦しみに負けて 悲しみにひしがれて とげとげのサボテンと化してしまうのは ごめんである 受けとめるしかない 折々の小さな棘や 病でさえも はしゃぎや 浮かれのなかには 自己省察の要素は皆無なのだから ~茨木 のり子~ |